活動方針
国東シュタイナーあめつちの学校について
ご縁あって繋がった国東半島で、シュタイナー教育を基盤とした学びの場を「コミュニティー」として作っていこうという思いを持つ者同士が集まって、一般社団法人「国東シュタイナーあめつちの学校」が設立されました。
現在、シュタイナー教育での通信制の可能性を模索しながら、シュタイナー教育の広域通信制高等学校を設立するための準備を進めています。
また、国東半島におけるシュタイナー教育の週末クラス「あめつちの森」も企画し、幼児親子クラス、小学生クラスを開いています。全日制学校設立に向けて「国東半島に国東半島に全日制シュタイナー学校を!父母の会」と力を合わせて話し合いや準備が進められています。
解決したい「社会」の課題
シュタイナー学校が日本で初めて作られてからおよそ40年。今では全国に10校ほどのシュタイナー学校ができました。
発祥地のドイツ、そしてオランダなどでは教育の多様性が認められており、シュタイナー学校であっても公的な支援を受けています。
日本においては、学校法人設立のハードルが非常に高いことと、シュタイナー教育独自のカリキュラムを制約なく実現したいという思いなどから、公的な支援を受けず、教員と保護者の力で運営している学校がほとんどです。
結果として、公的には「私塾」の扱いとなり、シュタイナー学校卒業後、大学や専門学校などへの進学を望む場合は「高校卒業程度認定試験」(高認)を受ける必要があります。規模の小さな学校にとって、高認のために各教科の学びを確保することは、大きな負担にもなってきました。そのため、一部の学校では在学生徒が私立の通信制高校とのダブルスクールを選択せざるを得ないこともあります。
そういった現状の中、大分県のある市長からの提案もあり、「大分県にシュタイナーの広域通信制高校を設立する」というプロジェクトが、約2年ほど前から進められてきました。
広域通信制の学校を設立することができた場合、大分や九州に限らず、日本全国のシュタイナー学校に通う生徒たちが、それぞれの地域での今までの教育環境を続けた上で、公的な卒業資格を得られるチャンスが生まれます。
これは、別の言い方をすれば、日本にはまだ存在していない「学校をつくる自由」をつくりだす試みでもあります。ドイツやオランダでも最初から「学校をつくる自由」があったわけではありません。100年近い歳月をかけて、親たちが自分たちの子どもに受けさせたい教育の場をつくるために運動し続けてきた結果です。
教育運動としてのシュタイナー教育は、この数十年で教員と保護者、そして学んだ生徒たちによって、すばらしい成果を生み出してきました。一方で、自由な教育を受ける権利を誰もが享受できる社会をつくることなど、シュタイナーの目指した社会変革としてのシュタイナー教育という側面はいまだ途上にあります。
この「広域通信制高校」の構想は、「自由への教育」を目指すシュタイナー学校を守りつつ、日本の公教育との接点を探ろうとする試みでもあるのです。
解決したい「個人」の課題
先に述べたように、日本におけるシュタイナー教育は各地のシュタイナー学校において、すばらしい成果を生み出してきました。それは学習指導要領に拠らず、人智学を基礎にした独自のカリキュラムによるものです。その独自性を守るため、教員たち、保護者の方々は学びつつ実践し、多大な労力をかけて、学校をつくってきました。その歴史を踏まえると、公的な高校卒業資格の必要性に関しては、学校の規模や、教員、保護者、それぞれの考え方によって全く違ってくるかと思います。
そんな中、私たちが耳を澄まし、聞き取りたいのは、少数かもしれませんが、「今のシュタイナーの高等部は公的に認められていない。進学等のためには高認を別に受験しなければならない」「将来を考えたとき、このシュタイナー教育自体が広く社会で認知されていなくて大丈夫だろうか」「シュタイナー学校に通っていたが、不登校の状態が続いている。この子の学びをどうすればいいのか」など、不安やとまどいを感じている方の声です。先に申し上げたように、学校の規模や状況によって、心から満足してシュタイナー学校で学んでいる子ども、保護者は多いと思います。ただ、私たちは不安やとまどいを感じている保護者や生徒の気持も大切にしたい。
シュタイナー学校が公的に認められていないことや、公的な高校卒業資格を得られないことに不安を感じている方、シュタイナー学校に通うことができなくなった子ども、身体的、その他の障碍によって通学が難しい子どもたちも、喜びをもって、学び続けてほしいのです。シュタイナー学校で学ぼうとする子ども、保護者をもっと増やしたいのです。そのとき、この広域通信制高校の設立は、日本におけるシュタイナー教育の幅をより拡げる可能性を持っていると確信しています。
同じく、「出口」としての高校卒業資格がないことによって、入学をためらう家庭や、高等部への進学を諦めようとしている家庭にとっても朗報になるはずです。また、公的な高校卒業資格取得の有無については気にならないが、専科授業へのフォローや充実を求める方々にも可能性を提示するものにもなります。もうひとつ、高校卒業資格が得られることで、各地のシュタイナー学校への就学希望者を増やすことにもつながっていくとも考えています。